野球のバッティングから、指導者のあり方を考える ~型にはめるのは正しいのか~
今更ですがこのブログのタイトルは「もしドラ桜」といいます。
これは、岩崎夏海さんによる日本の小説「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」の略の「もしドラ」と三田紀房さんによる日本の漫画「ドラゴン桜」を合わせたものです。
もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら - Wikipedia
僕の高校時代はまさしくこの2つの書籍の内容で説明することができます。
つまり、高校野球のマネージャーをしながら、奇跡の受験合格を目指していたのです。ただ一つ違うのは、僕は女子マネージャーではなく男子マネージャーだったということです。
今日の記事は、野球の話がメインです。僕が小学生4年生から高校3年生続けた野球の現場にいて思っていたこと、そして今思い返して気づいたことについて少し話したいと思います。
最初に申し上げますと、この記事の流れは、野球のバッティング指導を例に、従来の型にはめて指導することへの批判し、一人一人にあった方法を支援するスタイルが重要ではないかと話していきます。
これらの、野球の例というのは、私の体験談なので、現実にそのような指導者が存在したということになりますが、おそらく私が今まで接してきた指導者だけでなく、日本の野球の指導者のほとんどが今から話す型にはめるような指導法を行っているように予想しています。(違っていたらご指摘ください)
また、今回批判する形で、書いていきますが、今までお世話になった指導者たちの尊敬の念を失ったわけではありません。今でも感謝しています。僕自身は自分が指導する立場になった時に、今まで指導法の良いところは参考にし、悪いところは自分で考え改善していきたいという思いでこの記事を書くつもりです。
バッティングフォームの正解は存在するのか
(引用: https://www.sumitomokenki.co.jp/archive/baseball/)
野球といえば、ピッチャーのバッターの対決が醍醐味といえるでしょう。(もちろん、もっと細かいところも面白いポイントはたくさんありますよ!例えば三塁コーチャーとか)
なので、野球の練習の多くを占めるものの一つが、バッティングになります。バッティング練習を全くしない野球チームは無いでしょう。野球はボールをバットでうまくヒットを打てるチームの方が勝つ確率が高くなります。
ちなみに、皆さんは、バッターがヒットを打つ確率は何パーセントか知っていますか?
ヒットを打つ確率を計算したのを打率というのがですが、今セリーグの打率トップはヤクルトの山田哲人で34.8%らしいです。(2016年7月20日現在)
皆さん、この34.8%という数字をどう思うでしょうか?日本のトップクラスでこの数字なのです。低いと思いませんか?だってテニスで相手コートに入る確率が34.8% だったら絶対勝てません。
ここでいいたいのは、野球のバッティングは技術的に非常に難しいのです。
想像してみてください。プロのピッチャーは時速150kmのボールを投げてきます。だいたい0.5秒でボールがやってきます。しかもピッチャーは変化球を投げてきたり、遅い球を投げたりしてきます。
しかも、野球のバットはとても細く、しかも芯と呼ばれるよく飛ぶバットのポイントに当てないと基本的には遠くに飛びません。
このように、バッティングでヒットを打つのは、非常に精密な技術が必要だということがわかります。
なので、アマチュアの野球 (プロ野球でもそうだと思うのですが) では、指導者の役割として、選手のバッティングの技術を上げることが重要だということは間違いないでしょう。
ここで、一つ問題提起として、バッティングのやり方に絶対的な正しいやり方は存在するのかというのを上げたいと思います。
バッティングのやり方の考えるべき要素として、例えば「タイミングの取り方」「バットの軌道」「最初の構え方」などがあるのですが、それぞれに対して「この要素はこれが正しい!」という正解のやり方が存在するのか。というのを皆さんに考えていただきたのです。 (これを総合してバッティングフォームと呼ぶことにします)
(王選手の一本足打法)
(種田選手のガニマタ打法 http://ameblo.jp/raibu-live/entry-11791417174.html)
しかし、先ほどの打率の話からわかったバッティングの難しさ、それに対してプロ野球選手は一人ひとりバッティングフォームが違うことを見ると、バッティングフォームの正解は一つではないということは想像できると思います。
つまり、バッティングフォームの正解は人によって変わる、というのが僕の今の考えです。
考えてみると、当然一人ひとり体も心も違うわけですから、自分に合ったバッティングフォームを見つけていく姿勢が大事になるでしょう。
従来のバッティング指導
では、野球の指導者はどのようなバッティング指導をしていると皆さんは思いますか?
人によって多少は違うと思いますが、ひとことで言うと型にはめようとします。
例えば、少年野球の記憶をたどると「ダウンスイングだ!」「しっかり振りきれ!」「脇をしめろ!」「スタンスは真っ直ぐだ!」「最短距離にバットをだせ!」などなど、いわゆる野球の教科書に書いてある?基礎?を選手に伝えようとします。
さらに、試合になると、結果ではなく、型に合ったやり方でやっているかで評価しようとすることもあります。
例えば、三振して返ってきたら「ほら、ダウンスイングをしないから三振するんだ!」となるし、ヒットを打ったとしても、型にはまってなかったら「あいつの打ち方はみんな真似しないように。たまたま打ったんだ」みたいな会話が聞こえてきそうです。
型に合っているかどうか、もっというと「俺の教えた方法に合っているか」に過剰反応しているように思えます。
これでは、選手一人一人が自分に合ったバッティングを見つけるのは不可能でしょう。
型にはめた指導する理由は何か
従来の指導者がこのような指導をする理由を考えてみました。
- 自分も同じように型にはめられた指導を受けてきたから/そういう指導方法しか知らないから
- 選手に「指導者のおかげで技術が伸びました!」と思われたいから/感謝されたいから
- 自分のやり方を、みんなに当てはめられると思い込んでいるから
- 指導をしっかり行うことが指導者の責任だと思っているから
主にこの4つだと思っています。
なぜ、この4つだと言えるのかというと、実は自分も同じ経験を「受験指導」で行ったことがあるからです。
大学1年生のころ、まさしく自分は、自分の受験勉強方法が正しいと信じており、それをみんなにも適応できると思い込んでおり、生徒に感謝されたいとも思っていたのです。
それは、おそらく失敗でした。だから、現在「学び」や「指導の仕方」について深く考えるようになり、それを実践したり、発信していたりしているのです。
その受験指導の実践の様子は、この記事に書いてあるので、興味がある方は是非読んでみてください。
僕が思うに、今までの指導者の人たちも、実は迷い悩みながら指導していたのだと僕は思っています。
でも、どう指導すればいいかわからない、そんな状態で、試行錯誤の上、今のスタイルに行きついているのだと思っています。
そのことを一つフォローしておきたいです。(何様だという感じですが)
僕が自分自身の指導法の間違いに気づくことができ、修正しつつあるのは、プログラミング教育という(主にLifeisTech!)比較的新しい教育文化に触れることができたからだと思っています。おそらく野球の文化だけにいたら気づくことはできなかったでしょう。
といってもまだまだ発展途上なので、これからも追求していきたいです。
選手にとって指導者のあるべき姿ってなんだろう
では、どのようなスタンスで指導者は選手に接すればいいのでしょうか。
私が指導法について大変影響を受けたこの本を参考にして述べたいと思います。
www.kyouikutosho-shuppankai.com
この本の著者の田尻悟郎さんは、英語教師ですが、野球部の顧問でもありました。プロフェッショナル仕事の流儀では、野球部の指導方法の失敗を反省し英語の授業に活かすというシーンが描かれています。この本に書かれていることは本当に目からウロコです。指導者の立場であれば一回は読むことをオススメします。
この本での、教師の役割というのが
- 間違いを指摘する
- ヒントを与える
- 待つこと
と書いてあり、大変感銘を受けたので、これを野球に当てはめたいと思います。
間違いを指摘する
先ほど型にはめることを批判しましたが、間違っているやり方をしている場合は指摘すべきです。
極端な例では、バットの右手と左手の上下が逆だったら、明らかに間違いなので、それは指摘すべきでしょう。
高いレベルでは、胸を見せてしまうとダメなど、というところもあるようです。(なぜダメかは僕は説明できません)
どのラインまで間違っていると判断するかは、指導者の実力が問われると思います。
ヒントを与える
特に伸び悩んでいる選手に対して、問題解決のヒントや視点を与えることは指導者にとって重要な役割でしょう。
あくまでヒントなので、実行するのは選手次第です。
例えば、今年のイチロー選手は、去年よりバットを寝かせて構えることで、バットをそのままボールに対して出せるようになり、直球に対するヒット率が上がったようです。
しかし、選手によっては「バットの構えの角度」という視点がそもそもない場合もあります。
そんな選手に「バットの構えの角度」というヒントを与えることは、打率向上のヒントになりうるかもしれません。
指導者としては、理由が説明できるヒントの引き出しをどれだけもっているかが大事でしょう。
待つこと
実はこれが一番難しいのではないでしょうか。
選手が試行錯誤している時というのは、なかなか最初は結果がでないものだと思います。
そんな時に「やっぱりダメではないか。俺のやり方でやったほうがいい」という態度を取ると、選手のモチベーションはひどく下ってしまうし、せっかくの可能性を潰している可能性もあります。
ここは、選手を信頼すること、長い目で見て待つ姿勢が大事ではないのではないでしょうか。
まとめ、色々言ったけれど
今日の記事では、野球の選手の指導法という話をしたのですが、結局のところ僕も答えがわかっていません。これもバッティングフォームと同じように、その指導者や指導する場所によって属人的に正解が変わるもので、ずっと追求していかないといけないものだと思っています。
なので、僕が今日言った話は、正解ではなく、ただのヒントだと思っていて、みんなの役に立つかもしれないし、立たないかもしれない。
また、今日の話は、野球の話だけでなく、ほとんどの指導現場でも言えることかもしれません。皆様の問題解決のヒントになれば幸いです。
最後に、野球の指導に携わっている皆様へ
最後に、野球の指導の問題は、もっと多くの問題を抱えていることだと察しています。例えば、チームによっては選手がそもそもモチベーション低くて、試行錯誤するようなレベルではなかったり、金銭的な難しさがあったり、指導者にも上下関係があって自分のやりたい指導ができなかったり...チームによってたくさんが課題があり、単純に今日の話で解決できる話でないかもしれないというのも承知しているつもりです。なので、今日の話が「こうすれば野球の指導もうまくいくでしょ!」という軽い感じに伝わっていたのなら、僕の気持ちはそうではないということをここに書き記しておきたいです。この記事は、難しい現場で難しい問題を抱えながら指導している野球指導者達に敬意を持ちつつ、応援したい、頑張って欲しいという気持ちで書きました。そのことだけ、気に留めていただけるとありがたいです。