もしドラ桜

当たり前だけどみんなが言わないことを書いていきたい

受験指導バイトで普通の授業するのは辞めました ~自立した生徒へ育てる指導を目指して~

こんにちは、岩崎です。今年4月に東工大の大学院に進学致しました。今後ともよろしくお願い致します。

さて、先日Twitterでこのようなツイートをしたのですが…

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「家庭教師や個別指導で、ただ90分のあいだに問題を4,5問解くような普通の授業をしてるようでは、元々受かる脳みそしてる生徒しか第一志望に受からない、という説」

これは僕が5年以上受験指導のアルバイトに携わっていて感じたことです。

このツイートの次の日くらいに、友達から「あのツイート共感したわ〜岩崎はどんな指導してるの?」という話になったので、今日はその話を書きたいと思います。

今日の記事は「生徒を自立させる指導方法」という話に発展します。もし同じ悩みを抱えている人や自分はこういう指導方法を行っているという人がいらっしゃいましたらコメントいただけるとありがたいです。

前提条件

改めて、あのツイートの背景というのは、

  • 基本週に1回、90分 or 120分 の授業
  • 授業でやることは先生と生徒の間で決める
  • 生徒は高校生1人、先生は大学生
  • 生徒は学校のレベルより高い大学(第一志望)を目指している

という個別指導の状況を想定しています。 ここでの「先生」は学校の先生ではなく、受験指導アルバイト大学生のことを指します。 「生徒は学校のレベルより高い大学(第一志望)を目指している」というのは、学校が受験指導の指導の環境として完結していない状況を指しています。

一部の超進学校では、受験指導が充実していて、その学校で言われたことをやっているだけで、東大に合格する力がつくそうです。しかし、だいたいの高校は学校の授業だけで第一志望に合格することが難しく、予備校に通ったり家庭教師を受けてたり、もしくは独学で勉強を進めたりします。

この記事で想定している生徒は後者の学校だけで受験勉強が完結しない生徒を想定しています。

ツイート内の「普通の授業」のイメージはいわゆる普通の授業スタイルです。問題の解き方を解説したり、解法テクニックや問題の背景知識を喋ったり、勉強法や息抜きの仕方の話をしたり。授業の目標としては生徒が理解したり知識を得ることだと思っています。

こういういわゆる「普通の授業スタイル」を高い質で行うことが先生に求められることは間違いないです。しかし、そのことだけを先生が一生懸命頑張っても生徒は合格出来ないのでは、というのが僕の主張です。

次の「元々受かる脳みそしてる生徒」。この表現は誤解を生んだかもしれません。受かる脳みそというのは、決して今の学力や知能のことを指しているのではありません。受験生として自立しているか、ということです。

つまり、自立している生徒は行きたい大学に合格する可能性が存在し、自立できていない生徒はほぼ行きたい大学に合格できない、というのが僕の主張です。ではどのように指導すれば生徒が自立できるようになるかというのが、この記事で述べたいことです。

自立している生徒は、先生の授業から知識や考え方を吸収し自分のものにしようとします。そして自ら考え工夫をし、自分に合った勉強スタイルを確立します。あくまで先生は補助的な存在であり、教材のコンテンツの一つにすぎないのです。

しかし、自立できていない生徒の場合、普通の授業スタイルを高い質で行ったとしても、そこそこしか成績はあがりません。成績があがったとしても第一志望に受かるのは相当難しいと思っています。これは某予備校で働いて色んな生徒を見て感じたことです。

こういった生徒の指導することの難しいのは、高い指導力を持った先生ほど、受験生時代に自立した受験勉強をしており、自立していない受験生の気持ちがわからないということです。

なので、優秀な先生ほど「俺の勉強法を叩きこめば成績が伸びる!」と最初は思っています。僕も最初はそうでした。そして、それでは元々自立している生徒しか伸びないことに気づきました。

また、生徒が自立していないことは、先生の責任ではなく、その生徒の家族の責任が一番大きいと僕は考えています。だから自立していない生徒を指導するのは難しいのです。なぜなら、本来その問題を解決できるのは家族の力だからです。また、先生側はそもそもどうしたら自立させられるかというノウハウを持っていないので、成績が上がらないとわかりつつ、自分は授業を全力でやるしかないというジレンマに陥ってしまうのです。

しかし、それでは寂しいと僕は思いました。この問題点に気づいた僕は「どうしたら生徒が自立できるのか」というのを考え実践してきました。まだ答えは出ていませんが、それに近い一つの答えはでてきたような気がします。今日はそのことを話させて頂きたいです。

自立できていない生徒とは

自立できていない生徒とはどんな生徒でしょうか。具体例をあげます。

  • 授業はまじめに受けるが、次の授業まで何も勉強しない
  • 宿題はやるが、普段それ以外の勉強はしない
  • 明日からの1週間、何を勉強すればいいかわからない
  • 勉強法を調べたり、効率のよい勉強を追求しようとしない
  • 問題が解けない時に、人に聞くという解決方法しか思い浮かばない

こんな感じでしょうか。

問題点は授業外の時間にあります。 要するに授業中はまじめに受けるというのは当然でしょう。しかしそれは一週間の中でたったの2時間でしかありません。それよりも一週間の24時間×7日をどう過ごすのかの方が圧倒的に大事なのは明白です。

なので先生は、その授業も大事ですが、授業と次の授業の間の一週間をどう過ごさせるかというのを意識すべきです。結局その時間の使い方が成績の伸びに関係するのですから。

自立した生徒は、その一週間を有意義に過ごします。自立していない生徒はその一週間を無駄に過ごします。結果は明白です。

では、先生は生徒にどのようなアプローチをすれば、いいでしょうか。 どうすれば、生徒は一週間を有意義に過ごすような自立した生徒になってくれるでしょうか。

ここで逆に考えました。なぜ生徒は自立しないのか。 先ほど自立できない理由は家族にあるとしました。しかし、週に1回しか会わないアルバイト大学生が生徒を自立させる方法があるとしたら、それは革新的なのではないでしょうか。

今から、僕が考える生徒が自立できない理由を、段階が低い順に話して行きます。そしてそれに対する先生のすべき対応について書いていきます。項目は

  • 受験勉強に後ろ向き
  • 基礎力や前提知識がない
  • パブリックな教材を選べていない
  • 情報が落ちていることを知らない
  • 自立する勇気がない、決定する勇気がない

と続きます。この中で特に言いたいのは後半の二つです。

生徒が自立しない理由

受験勉強に後ろ向き

これは自立以前の問題なのですが、 なぜ受験をしなければならないか納得していない。合格とか別にいいやと思っている。など

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(引用 http://daily-info.xyz/archives/10.html)

こういう生徒と当たった時は、授業の前にしっかり話すべきです。 なぜ受験勉強するのかというところに生徒が納得していないと、絶対にモチベーションが上がらないからです。受験勉強を好きになれとはいっていません。立ち向かう覚悟があるのかということです。

その場合なぜ受験をしたくないのかという理由を聞くことが大事です。もしその理由が、勘違い、情報不足、自分ができないという思い込み、受験勉強への不安、などだったらしっかり話して、その原因を解決する方向に向かうべきです。

もし、しっかり話した上で、それでも受験勉強はしたくない、というのであれば、それはその子の人生の決定ですから、生徒の親とも相談して、今後生徒とどういうスタンスで関わっていくか決めていきましょう。

基礎力や前提知識がない

これも自立より前の話です。ですが、結構大事です。 自立しようにも、自分で勉強を進めるだけの基礎力がない。 高校生なのに、中学や小学校の知識が抜けているというのは実はよくあることです。それはしっかりと中学校の教科書に戻ってやり直すべきです。 これは先生と生徒の二人三脚で行くべきです。基礎力を自分で付けることは非常にエネルギーが必要です。まず一人では無理です。なので基礎力に関しては、先生主導で授業や宿題を出していくべきです。「自立」というワードは一旦忘れて、先生の方から生徒を引き上げてあげましょう。

目標は、生徒が参考書を自分で進められるほどの基礎力、前提知識を見につけることができる状態にすることです。

パブリックな教材を選べていない

受験勉強の全体像をなんとなくイメージ出来ているか、これは個人的には非常に重要だと思っています。イメージができていなければ自立はできないでしょう。

そのためには、受験生のメインの教材はパブリックなもの、例えば市販の参考書、問題集、受験サプリ...お金を払えば問題と解説がセットで入手できるものが良いです。生徒が一人で進められ、かつ勉強の目標が具体的に立てやすくなるというのが大事です。パブリックな教材を選ぶことは受験勉強を逆算的に計画を立てやすくします。

逆にパブリックでない教材というのは、先生が作るオリジナル教材です。

先生が作るオリジナル教材では、元々準備するのではなく、毎週毎週準備することを仮定しているのですが、いわゆる、問題と解説がどちら共パブリックでない状態です。それでは予習ができない、あとどれくらいあるのかわからない、いつ終わるのかイメージ出来ない、解説は先生に聞かないとわからない。

教材の質が悪いのではなく、受験生が受験勉強の全体像をイメージしにくいことが問題です。

もしかしたら、生徒や生徒の家族は先生の自作プリントを作ってくれたことに感動してくれるかもしれません。しかし、生徒の自立のためには避けたほうがいいでしょう。

しかし、これはメインの教材に関しては、つまり一番やりこまないといけない教材はパブリックな教材が良い、ということです。なので補助的な意味での教材という意味では先生が作るオリジナル教材でもOKだと思っています。

情報が落ちていることを知らない

これは実は今回2番目に言いたいことです。

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(引用 http://chigai-allguide.com/%E6%8E%A2%E3%81%99%E3%81%A8%E6%8D%9C%E3%81%99/)

なぜ、自立を薦めるか、それは大学受験に関して言うと、自分で勉強を進めるための教材、解説書、勉強法、教材の選び方...と言った情報は人に聞かなくても本屋やネットで入手できるほど、情報がまとまっていて、充実しているからです。大学受験は比較的自立的に活動しやすい分野です。

自立するためには、例えば自分で勉強法を考えなければなりません。でも考えるというのは、生徒自身が一から考えて欲しいという意味ではありません。色々な勉強法を知りながら、どの勉強法がいいか吟味して、選択する、もしくは組み合わせてオリジナル化して欲しいということです。

大学受験の分野は、その「色々な勉強法」という情報を、本屋やネットで容易に入手できる状態なんです。つまり最悪先生に聞かなくても解決できます。

「勉強法」の他にも、覚えるべき知識をまとめた「単語帳」「資料集」、解くべき問題をまとめた「問題集」、理解するために詳しい解説が書かれた「参考書」、参考書の選び方が書かれた「参考書の参考書」、こういった情報は、大学受験の場合、非常によくまとめられており、充実しています。

ここで一つ前で紹介した「パブリックな教材」という概念が大事になってきます。「わからないことを先生に聞く」というのは理解のスピードとしては一番早いかもしれません。本を見るより、人に聞くほうが理解しやすいでしょう。しかし、先生とやり取りは一週間に120分しかできません。先生という教材はパブリックではないのです。だから、先生に聞かないと解決できない状態ではまずいです。ですから生徒がパブリックな教材で解決できる手段を持っていることが重要です。人に聞いては行けないという意味ではないですよ。

しかし、生徒は最初そのことを知りません。自分で物事を解決できるだけの情報を入手できることを知りません。先生は生徒はそのことを知らないということを認知するべきです。

だから、先生の役目というのは、その情報を入手可能であることを教えてあげることです。そしてどこらへんに良い情報が落ちているのか、情報に対してどういう視点で見るべきか、というのをアドバイスすることが先生の役目です。

先生に聞かないと解決できない状態から脱してあげることです。勉強は自分で進めることができる環境にあることを生徒に知らせてあげるのです。

さて、ここまで生徒が自立するための環境を整えることでした。 まず受験勉強に向かい合うこと、次に自立するために必要な基礎力を身につけること、そして自立するための教材や情報を入手できる環境にいることを気づかせること。これで生徒はいつでも自立できる状態です。

しかし、ここまで準備しても、生徒は自立しない場合があります。なぜでしょうか。それを次の項目で話します。

自立する勇気がない、決定する勇気がない

これがこの記事で一番言いたい主張です。

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(引用 http://kansindo.mods.jp/blog/?p=10679)

自立するということは、自分の行動を自分で決定することが必要です。しかし、自立できていない生徒は、自分の行動をを自分で決定する勇気が足りないのです。自分で決定するというのは、自由なようで実はとても大変なことです。他人の言われたことをやる方が実は楽なのです。しかし、ずっと他人の言われたやり方でやっていると、自立する勇気が持てなくなります。

では、先生は生徒にどのように接するべきか、

生徒が自立できる準備ができたら、生徒が決定して行動するプロセスを、先生側からつくることです。

例えば、「来週までの宿題、どこからどこまで何を進めるべきか」生徒に決めさせて発言させます。その時に、生徒は判断基準に困ることもあります。その時は先生側から判断の基準や視点を提示してあげましょう。大事なのは、正解は「生徒が決めたこと」が正解だという姿勢です。そして、決定に至るまでの過程(なぜその決定にしたのかという理由)というのも、聞いてみましょう。

生徒が決定したら、その意志を尊重する姿勢が大事です。生徒を信頼しましょう。そして一週間後に、フィードバックします。 この時は、良かった良くないより、どの視点でフィードバックすべきかというのを伝えて、生徒にフィードバックしてもらいます。

この自分で考えて自分で決定して自分で行動するというプロセスを経験させ、それを尊重するという態度が、自立する勇気を得るために必要なことだと僕は思っています。

ダメなのは先生が「俺の受験生時代はこうだったから、君もそうしなさい」という押し付けるような態度です。

もし自分の経験を生徒に伝えたい場合は、その行動とその理由を「プレゼンする」という態度で僕はしています。

僕はこういう理由で次の一週間はこう過ごした方がいいと思うけど、生徒君が最後は決めていいよ。と理由をしっかり伝えることが大事です。そして最終判断は生徒にあるという姿勢が大事です。

宿題の他にも、参考書選びや勉強の進め方に関しても同様です。

自分の行動を自分で決定することって、最初は結構怖いことだと思うんです。でも何度か尊重されると「俺の決定って結構いい感じなのかも」と自分の決定に自信が持てるようになってきます。

自分の決定に自信を持てるようになると、自立へ少しずつ向かっていきます。「自分で考えて行動していいんだ」と気づくようになってきます。

先生としてするべきことは、生徒が自分で決定する機会を作ること、そしてその決定を尊重する姿勢を見せることです。

また、指導で実践して気づいたことなのですが、人間は自分で決めたことは、モチベーション高く行動しやすいようです。自立に向かうだけでなく、モチベーションを高める効果も期待できます。

まとめ

ここで、自立している生徒にとって僕が思う先生の役割というのを、まとめました。

  • 知識を理解するために効率の良い方法の一つ
  • 情報が落ちている場所や情報の判断基準を教えてくれる存在
  • 生徒の考えを尊重してくれる存在

本気で第一志望に合格させようとしたら、こういう存在であるべきなのではないかと僕は信じて今受験指導アルバイトに向かい合っています。

この指導の考え方が正しいかどうかは、今の生徒が合格した時にご報告させていただきたいと思います。